専門校教育
プロから高評価を獲得!「日本のマンガ家になりたい」フランスから来日した学生10人が本場の持ち込みでつかんだ手応え
フランスの「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」マンガ科の学生10名が、渾身の作品を完成させた精鋭10名のフランス人の学生たちがマンガ家の夢を叶える第一歩として来日しました。
2026年7月12日(日)からの研修の総決算として、17日(金)に学生たちが講談社ヤングマガジン編集部を訪れ、プロの編集者からフィードバックをもらえるという「持ち込み」を行いました。

マンガ家になるための第一歩「MANGA CAMP(日本研修)」
ヒューマンアカデミーは、フランスに展開する「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」のマンガ科に所属する学生たちが1週間日本に滞在し、日本のアニメーションやサブカルチャー、食文化を通じた日本の日常などに触れたり、日本の出版社編集部による作品講評や出版社への作品の持ち込みを行ったりする実践プログラム「MANGA CAMP(日本研修)」を開催しました。研修の最後には、ヤングマガジンのプロの編集者の担当付きになるための大勝負に挑みました。
今回来日した10人全員が日本へ来るのは初めて。マンガ家への道をどのように歩み始めたのでしょうか?そしてマンガ家になるためにどのような日常を送っているのでしょうか?講談社への持ち込みをした学生たちに密着しました。


マンガ家を目指す学生たちのマンガへの想い
「MANGA CAMP」に参加した学生に、初めて来日し、プロの編集者に持ち込みを行う今の素直な想いをインタビューしました。
ジョン・ブッカーさん(講評時の評価20点満点方式で16点以上の「マスターレベル」相当を獲得)

紙の上で自分を表現したり、さまざまなキャラクターを通していろいろな物語を描いたりすることに興味があったというジョン・ブッカーさんは、「もともと探求することが好きでマンガという道を選んだことは、自分にとって大きな目標の1つだった」と話します。
日本のマンガを学ぼうと思った理由については「アニメやマンガの世界を知った時、最初に触れたのは日本の作品。『暗殺教室』や『東京喰種』、『進撃の巨人』など。当時はフランスの絵柄や作品などのスタイルよりも、まずは日本のスタイルに影響を受けていました」
フランスで日本のマンガを学ぶにあたって最も大変だったことは、間違いなく「コマ割り」なんだそう。とても技術的な部分で独特なやり方があって、構図に多様性を持たせることが大切だということです。 「それともう一つ付け加えるならシナリオ(脚本)を書くこと。絵を描いたり、キャラクターを生み出したりするのもよいですが、それらのキャラクターをうまくストーリーの中で生かして表現していくのは、また別の難しさがあると思っています」
講談社への持ち込みについて「自分の作品により多くのフィードバックが得られるという期待感もあります。今後の新しい作品作りに取り組む際に、どの意見を取り入れるべきかがわかり、これからの作品作りで自分をもっと成長させていけると考えています」将来については、「読者を惹きつけて、主人公やキャラクターたちの冒険を追いかけさせたくなるような、強く心を揺さぶる作品を届けたい。」と語ってくれました。
ノラン・ぺシュールさん(「マスターレベル」獲得)

フランス語(国語)の授業で短編小説を書いたことがきっかけで、みんなと共有することがとても楽しくて、そこから「物語を書きたい」と思うようになったというノラン・ぺシュールさん。もともとマンガが好きだったこともあり、それならマンガを作ろうと思ったということです。
フランスで日本のマンガを学ぶにあたってぶつかった壁は「何といっても『言語』」。 そして次に『コマ割り』です。コマ割りの仕方がフランスの作品とは異なっていて、 作画のタッチについても、個人的にはフランスのマンガと比べて、日本のマンガのほうがよりダイナミックな線の描写になっていると感じます」と話します。
その壁を乗り越えるために、毎日絵を描く努力を欠かしません。シナリオも、読者の目を引きつける魅力的なストーリーになるよう、極限まで練り上げることを大切にしています。
「MANGA CAMP」の意味については「日本人の視点はフランス人の視点とは異なるため、両方の視点を取り入れて吸収できます。もう1つは認知度(露出度)の面で、日本でマンガを出版することが、世界中の多くの国々の人にマンガを届けるための近道だと考えています。夢は自分のストーリーを世界中の人々と共有することなので、日本で挑戦することこそが最良の選択だと感じています」とのこと。「喜びに満ちた気持ちであったり、怒りや悲しみであったり、できるだけ多くの感情を読者と分かち合いたいと思っています」と話していました。
エリナ・バニシックさん

高校に通いながらデッサンの勉強をしていたというエリナ・バニシックさん。その時の絵の先生が、「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」の第1期卒業生だったんだそう。ヒューマンアカデミーについての話を聞かせてもらって興味を持ったのがきっかけだと話してくれました。
「マンガといえば『日本の文化』というイメージがあるので、学ぼうと思ったら自然と日本のマンガということになりました」。
毎日制作・練習を重ねています。「年間を通じて、学校で課題や練習があって、それとは別に自分自身にも課題や練習のノルマを課しています。自分が苦手とする部分や苦戦しそうなポイントを克服し、さらに上達できるように努めています」と言います。
フランスで日本のマンガを学ぶにあたって「言葉の壁」が一番大変だと答える学生が多く、克服するために、日々絵を描き、シナリオを練り直すなど、マンガの制作に取り組んでいます。
持ち込みについては、「丸1年間しっかり制作を重ねてきたからこそ、日本で素晴らしい編集者の方々に会いに行けること自体が、大きな成果だと感じています。さまざまなマンガ作品を見ているプロの編集者の方々から、直接コメントやアドバイス、良かった点も悪かった点もフィードバックしてもらえるなんて、本当に素晴らしいことです。頑張って作り上げた作品なので、プロの方々に評価していただけたらうれしいです」と素直な気持ちを話してくれました。
プロの編集者から見たマンガ家への道を歩む学生たちの才能と可能性
日本のマンガを愛する学生たちの作品は、プロの編集者の目にはどのように映ったのでしょうか?印象や彼らの才能について感じた素直な想いを伺いました。
ヤングマガジン編集部 渋谷隼汰さん

学生全体の作品の印象は「レベルの差はあったかなとは思うんですが、めちゃめちゃ絵が上手い方や、マンガの構成にこだわっている方、コマ割りとか「ここを決める」「ここを抜く」というのができている方が多く、すごく伸びしろを感じました。まずは「分かりやすい」ということが大事。もう作者さんなので多分分かっているものとして描いている部分があると思うので、例えば「このキャラクターとその後に出てくるキャラクターは同じ」とか「このキャラクターに集中して読んで」とか、そういうことがセリフでも絵でも分かるといいのかなと。そこが一番大事かなと思いました」と話しました。
また、画力についても触れ、「マンガは小説と違って絵を描いているものなので、絵が綺麗だとそれだけでポイントが高い。その点はすごく重視しながら見させていただきました」
渋谷さんはプロのマンガ家を目指す学生たちへ「すごく情熱に溢れた方々だと思うので、その情熱をぜひそのまま我々にぶつけていただければ、我々もちゃんと真摯に読み込んでフィードバックさせていただくので、これからもどんどん持ち込んでいただいて、プロデビューを目指していただければなと思います」とエールを送りました。
講談社 ヤングマガジン編集部 副編集長 平野遼太さん
平野さんは「普段は海外の方の持ち込みを見る機会が少ないので、とても新鮮で楽しかったです」と振り返ります。ストーリーを重視した作品が多い一方で、主人公が明確でない作品もありました。そのため、まずは主人公を立て、その人物の視点で物語を読める構成になっているかを意識して見ました。
「学生の皆さん日本のマンガが好きだと思うので、日本のマンガに合わせようとしているのかなという感じがしたので、海外らしい独自の視点の作品がもっとあるといいなと思いました。」と指摘しつつ、エールを送りました。
基準に達する評価を得て〝名刺を獲得〟した学生がのべ6人!
マンガ業界では、作品の持ち込みなどをきっかけに編集者から名刺をいただくなど継続的な接点が生まれることが、プロを目指す上での一つのステップとなります。複数の項目で点数化し、20点満点中16点以上を、今後の作品制作への期待を示す「名刺獲得相当」の目安としています。今回の研修では、参加学生がのべ6人、この基準に達する評価を得ました。
レニー・バタイユさん(「マスターレベル」獲得)

編集者との対話を振り返ってみて「共通して言われたフィードバックは、ストーリーの面でいくつか改善すべき課題がある」ということでした。自分が今後どこに集中して取り組むべきかがはっきりとわかりました。
今後の夢には「マンガコンテストで賞を受賞することや出版につなげること、シンプルにそれです」と力強く話しました。
今日までそばで支えてくれた先生やスタッフのサポートについては「すごく感謝しています。多くのことを教えてもらいましたし、彼らのおかげで大きく成長することができたと感じています。これまで教えてもらったことをできる限りしっかりと活かしていきたいと思います。」ということです。
エマール・アレクサンドルさん

編集者からの印象的なフィードバックについて「ストーリー全体の流れがしっかりと伝わっていて、構成や表現の面でもよくできていると評価してもらえたことは、とても嬉しかったです。」
エマール・アレクサンドルさんの作品は、中高生など10代の読者層に向けたもの。根底にあるテーマは、人間味あふれる内容。「10代の読者の力になったり、あるいは笑顔にできたりするような作品になればいいなと思っています。次の目標は新しく物語を書き始めて、マンガを執筆することです。そして読み切り作品を何本も描き上げてストックし、コンテストに応募して手応えを確かめたいと思っています。最終的には、作品の出版につなげるのが目標です。」と夢を語りました。
マンガ家・プログラム監修者 すねやかずみ先生

「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」マンガ科の教育に長年携わってきたすねや先生に今年の学生について聞いてみたところ『みんな素直でいい子たち、集合時間も全員が時間より前に来るのですごく楽でした』と笑顔で話してくれました。
小学館、集英社、講談社などの大手出版社の編集部をすべて回れたのは、実は初めての試みだったとのことで、「出版社ごとの違いも学生たちに見せることができたと思います。何年か前よりも外国人のマンガ家志望者を受け入れる気持ちや体制が少しずつ整ってきていて、編集者一人ひとりも『外国人だから』という感じではなく、一人の『マンガ家志望者』として彼らを見るようになってきたと感じています。」
フランスに戻ってからについては、「プロになるため」ということだったら、いくらでもやり方を伝えることができますが、それ以前に「作品づくり」の部分で、日本で勝負するんだったら「まずはキャラクターを強く作る」とか、そういったポイントをしっかりと伝えていきたいと思っています。」と話していました。
これからも学生たちの本気の挑戦は続く
〝言葉の壁〟も〝国境〟も超えて日本のマンガ業界へ本気の挑戦をした学生たち。講談社から出てきた彼らの表情は、確かな自信と喜びに満ち溢れていました。「自分のマンガで世界中の読者を元気にしたい」という純粋な夢。そしてその夢が叶うまで全力で寄り添い、伴走する先生たちの存在が今日の学生たちの素晴らしい笑顔を引き出したのでしょう。学生たちの挑戦は続いていきます。
<作品講評・持ち込み実施概要>
7月13日(月):サイドランチ編集部による作品講評
7月14日(火):秋田書店 少年チャンピオン月刊誌編集部・週刊少年チャンピオン編集部による作品講評
7月15日(水):小学館 週刊ビッグコミックスピリッツ編集部・マンガワン編集部への作品持ち込み・講評
7月16日(木):集英社 ヤングジャンプ編集部への作品持ち込み・講評 7月17日(金):講談社 ヤングマガジン編集部への作品持ち込み・講評
