menuclear

専門校教育

約80名の新入生を迎えたフランスの"MANGA"アカデミー " "コミックカルチャーの聖地"で歩むクリエイターへの道

フランス校_サムネイル.jpg

「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」は、フランス南西部の都市・アングレームにある、欧州初の日本のマンガ・アニメの専門学校です。20159月に開校した同校では、どんな授業が行われ、生徒たちにはどんな目標があるのでしょうか。本年9月にも約80名の新入生を迎えた「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」の様子をレポートします。

取材協力/ディレクターCaroline PARSONS、すねやかずみ先生(ヒューマンアカデミーヨーロッパ)

DATA

フランス校HP.png

  • 所在地はフランス南西部の都市・アングレーム。
  • 「Manga Pro」「Anime Pro」「Game Art & Illustration Pro」「Game Pro」等の4コース(全日制3年間)が中心。経験者用のProコースや短期集中コースも実施。
  • 約220名が在籍。卒業生は約200名(2021年10月現在)。
  • 公式サイト(仏語)https://eu.athuman.com/

 

目次

1 フランス最大の"コミックカルチャーの聖地"で学ぶ
2 "プロのマンガ家"を目指す授業とワークショップ
3 授賞者が続々登場! 人気クリエイターとして歩み始める生徒も

  

フランス最大の"コミックカルチャーの聖地"で学ぶ

オリエン②.jpg オリエン⑦.jpg
本年9月にも約80人のフランス人の生徒が入学。先生やスタッフ、構内の紹介や、授業のオリエンテーションに臨んだ。新型コロナウィルス予防策に関する説明なども実施。

フランスの南西部の都市・アングレーム。フランスで最も古いマンガ関連のイベントであり、"マンガ界のカンヌ"とも呼ばれる「アングレーム国際漫画祭」の開催地です。人口は約4万人。多数のアニメーション制作スタジオが集う、マンガ、アニメ産業が盛んな都市としても知られています。

「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」は、この都市を流れるシャラント川の近くのボルドー通り添いに、2015年に開校しました。現在、1830歳くらいまでの約220名の生徒たちが、ここで日本のマンガ・アニメに関する制作技術や文化を学んでいます

map.png

▲ピンの示す場所がアングレーム。人口4万人ほどの都市で、ワインで有名なボルドーから車で1時間程度の距離にある

関連記事:今や日本を代表するポップ・カルチャーとなったマンガやアニメ。2015年9月にヒューマンアカデミーヨーロッパは、欧州初の日本のマンガ・アニメの専門校として誕生しました。

"プロのマンガ家"を目指す授業とワークショップ

生徒の多くが目指すのは、国内外で活躍できる"マンガ家"です。基礎的なデッサンやカラーイラスト制作、アナログ、デジタル両方のマンガ制作の技術のほか、日本のマンガづくりのセオリーや技法を学習します。

1年生、2年生は、主に短中編の読み切りマンガ、3年生は長編マンガと、実際に作品を完成させ、プロとしての意識や実力を磨くことで、将来への道筋を確実なものとしていきます。デビューを目指して、多くの生徒が国内外の出版社への持ち込みやプレゼンにも果敢にチャレンジしています。

講師は、アニメーション、ゲーム、イラスト、バンド・デシネ(フランスの伝統的なマンガ)の制作に関わるフランス人のクリエイターや、美術やデジタルコミック技術のフランス人のプロ、日本人のプロのマンガ家5名など。授業の内容に応じて、さまざまな専門家が務めています。

授業風景①.JPG 授業風景③.JPG
▲9:001730まで、コースに必要な授業を受講。日本とフランスをオンラインで結び、日本人のプロマンガ家の講義や指導を受けるための、リモート授業なども実施している

日本文化や日本語の授業が実施されていることも、「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」の独自性です。過去には、生け花や着物の着付けなどのワークショップも実施されました。

日本の言葉や文化に関する学習で、「日本のコミックやアニメの中の世界をリアルに体感し、日本人の感性を理解することで、自分のマンガ表現に生かせる」と、同校のすねや先生は語ります。

日本語勉強.JPG

▲日本語の授業の様子。東京・秋葉原の「総合学園ヒューマンアカデミー マンガカレッジ」への合宿なども行われている(※ 20219月現在はコロナ禍のため休止中)

さらに、地元の「国際アングレーム漫画祭」や多数のコスプレイベント、パリで開催される「Japan Expo」(日本文化の総合博覧会)などへの参加にまつわる、出展作品の制作やワークショップなども実施しています。
また、ハロウィンやクリスマスには、校内でのゲーム大会などが開催されています。これらのイベントを主催する学生組織の名称は、「SEITO-KAI(生徒会)」。作品だけではなく、学校内での生活にも、ユニークな形で日本のカルチャーが取り入れられているのです。 

国際マンガ祭①(コロナ禍は中止).JPG 国際マンガ祭③(コロナ禍は中止).JPG
▲過去の「国際アングレーム漫画祭」出展の様子。多くの生徒が授業以外の制作活動やワークショップにも積極的に参加

授賞者が続々登場。人気クリエイターとして歩み始める生徒も

実際に、「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」で学び、日本のマンガ雑誌の新人賞などを授賞する生徒も、次々と登場しています。

ポール・グレタさんは在校中の2017年に日本の出版社にマンガ作品を投稿し、「週刊ヤングジャンプ月例新人マンガ賞」を、その後も同誌の新人マンガ賞「佳作+月間ベスト賞」を授賞して、ヤングジャンプの公式サイトでデビューを果たしました。フランスの出版社とも契約し、2023年にはコミックスの出版も決定しています。

ポール受賞写真(強矢先生と).JPG

▲ポール・グレダさん(写真右)と、すねやかずみ先生(写真左)。グレダさんは「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」の一期生。来日経験もあり、日本語でも作品を発表している

▼在校生・卒業生による主な授賞歴


  • 集英社 ヤングジャンプ シンマン賞(月例新人漫画賞) 期待賞 (2017)
  • 集英社 ヤングジャンプ シンマン賞(月例新人漫画賞) 期待賞 (2018)
  • 集英社 ヤングジャンプ シンマン賞 佳作 (2019)
  • 秋田書店 別冊少年チャンピオン漫画賞 「編集長BET ON賞」(2019)
  • 講談社 イブニング 新人マンガ賞e-CUP奨励賞 (2019)
  • European Comic School Contest 2018 マンガ部門入賞(2018)
  • European Comic School Contest 2018 イラスト部門入賞(2018)
  • International Comic School Contest 2020 ストーリーボード部門グランプリ(2020) ほか

近年は、WEBSNSでの作品の発表を通じて、評価を獲得する生徒も増えました

「人気メディア『WEBTOON』とプロ契約をして連載を始めたり、アーティストをサポートするサイト『Patreon』で沢山のファンから支援を得たり、SNSでの作品販売によって、イラストレーターとして収入を得ている生徒などがいます」(すねや先生)

マンガを本格的に学ぶうちに、編集者や原作者を目指したり、教える側になりたいと考える生徒などもいて、目標や夢は様々な形で広がっているようです。
生徒たちは今後の活躍を目指して、日々の学びに邁進しています。

「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」の歩みとともに、活躍の場を広げる生徒たちの未来に、今後もぜひ注目してください。

まとめ

国や言葉を越えて活躍できるクリエイターへの登竜門となった「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」。今後も、人気クリエイターや作品が、ここから続々誕生するでしょう。

将来的には、日本校とのさらなる交流によって、フランスと日本の生徒が互いの学びを深めたり、作品発表の場を広げたり、といった展開も検討されています。同校の取り組みと可能性に期待が寄せられています。

 

TEXT:「ヒューマンアカデミーヨーロッパ」取材班

総合学園ヒューマンアカデミー マンガ・イラストカレッジはこちら

RELATED

この記事に関連する記事