menuclear

専門校教育

総合学園ヒューマンアカデミーフィッシングカレッジ卒業生、青木大介さんが本場アメリカのプロトーナメントで優勝

Aoki04.jpg

Profile
青木大介(あおき だいすけ)さん
 高校卒業後、2001年にヒューマンアカデミー フィッシングカレッジ旧東京校に入学。卒業後は山梨県河口湖に居を移し、レンタルボート店でアルバイトをしながらJB(日本バスプロ協会)トーナメントに出場。2007年にビッグタイトルのひとつであるJBジャパンスーパーバスクラシック優勝。

 2008年にはJB最高峰のカテゴリーであるJB TOP50シリーズで年間優勝を果たす。その後も数々のメジャータイトルを獲得し、自身の釣り具ブランドである"DYSTLE"を創業。2017年のJB TOP50シリーズ年間優勝を契機にアメリカ参戦を発表、2019年からアメリカB.A.S.S. のBassmaster Openに出場している。

※B.A.S.S.とは:1967年に創設されたBass Anglers Sportsman Societyの略称で、複数存在するアメリカのトーナメント組織の中でもっとも長い歴史を誇る。Elite Series、Bassmaster Open、アマチュア向けのNationや学生を対象としたCollege、High Schoolなどさまざまなカテゴリーのトーナメントを開催。各カテゴリーの上位のみで年に一度開催されるBassmaster Classicはアメリカでもっとも権威ある大会とされ、優勝賞金は30万ドル(約3,000万円)。

フィッシングカレッジを卒業し、日本の頂点に立った青木大介さん

 2021年4月。日本のバスアングラーたちが歓喜に沸くニュースが届きました。フィッシングカレッジの卒業生で日本のバストーナメント界でも活躍していた青木大介さんが、バスフィッシングの本場アメリカのトーナメントで優勝を果たしたのです。


 ブラックバスの原産地であるアメリカではバストーナメントが盛んで、優勝賞金が一千万円を超える大会も珍しくありません。ゴルフやテニスなどのメジャースポーツには及びませんが、それでも生涯獲得金額が6億円を超えるプロがいるほどです。


 1982年、神奈川県秦野市で生まれ育った青木さんがバスフィッシングのプロになろうと決心したのは中学生時代。高校生の頃からアマチュアトーナメントにも出場して腕を磨き、高校を卒業してフィッシングカレッジに入学すると、当時講師を務めていた現役のプロたちからも「すごいヤツがいる」と噂になっていたそうです。

 フィッシングカレッジを卒業した青木さんはバスフィッシングのメッカともいえる山梨県河口湖に移住。レンタルボート店でアルバイトをしながらプロトーナメントに出場する日々を送りました。そこから数年はなかなか成績が上がらず苦労したそうですが、2006年にJBマスターズシリーズで年間優勝、2007年にビッグタイトルのひとつであるJBジャパンスーパーバスクラシックで優勝すると、ここから快進撃が始まりました。

Aoki02.jpg

2007年、初めて手にしたビッグタイトルはJB ジャパンスーパーバスクラシック。ここから怒涛の快進撃が始まった

 2008年には日本で最高峰となるシリーズ、JB TOP 50で年間優勝。2009年にはトーナメント組織の垣根を越えた精鋭のみで競われるBasser Allstar Classicで優勝してグランドスラムを達成したのです。その後も快進撃を続けた青木さんは2017年の時点でJB TOP 50年間優勝3回、JBジャパンスーパーバスクラシック優勝2回、JBエリート5優勝3回、二度目のBasser Allstar Classic優勝とダブルグランドスラムを達成、日本のバストーナメント界の頂点に君臨。また、2013年には自身が開発を手掛ける釣り具のブランド"DYSTILE"(ディスタイル)を創業。数多くのバスアングラーから高い評価を受け、ビジネスでも成功を収めました。

Aoki03.jpg

2015年には精鋭たちが集うBasser Allstar Classic2連覇を達成。日本の頂点に君臨した瞬間だった。

英語、そしてコロナ禍...。試合に臨むための環境作りに苦労した最初の2シーズン

 三度目のJB TOP 50年間優勝を果たし、日本の頂点に立った青木さんが次に目指したもの...それがバスフィッシングの本場アメリカでした。トーナメントアングラーとして「より高いレベルで競いたい」という渇望は必然ともいえるもの。しかし、アメリカのプロトーナメント参戦は決して簡単なことではありません。トーナメントのエントリーや現地で使用するボートや車の用意をはじめとして、アメリカ在留資格の取得などを自ら行なう必要があります。

 また、ボートや車には故障がつきものですが、こういったトラブルシューティングも自力で解決するか、業者に任せる場合もすべて交渉は英語。英語が得意ではない青木さんにとって「万全の体制で試合に臨むこと」こそが、最初にして最大の障壁だったといえるでしょう。事実、青木さんは自身のインスタグラムにも「苦戦続きで思うような結果が出ず、トラブルなども多く正直辞めたいな〜 なんて思いも湧いたほどです」と綴っています。
 

 青木さんが参戦しているトーナメントは、アメリカでもっとも長い歴史を誇るトーナメント組織、B.A.S.S.(Bass Anglers Sportsman Society)において上から2番目のカテゴリーとなるBassmaser Open。最高峰のカテゴリーとなるElite Seriesへの登竜門といえるものです。青木さんは2019年から2020年までの2年間で11戦に出場、この間の最高位は4位。これを含め、入賞とされる40位以内が5回という結果は、日本のチャンピオンとして納得がいくものではなかったと思われます。


 慣れない環境に加え、新型コロナウィルスの影響も小さくはありませんでした。日本よりはるかに多数の感染者と死者に見舞われたアメリカではトーナメントがたびたび延期になり、さらに渡米してからも一定期間の隔離措置がとられるなど、思うように練習ができない日々が続いていたのです。

3シーズン目にしてようやく手にした逆転でのアメリカ初勝利

 そして2021年、ようやく青木さんに栄光の瞬間が訪れます。
 Bassmaster Southern Open第2戦の舞台はテネシー州東部のダグラス・レイク。広大なアメリカにおいては比較的小規模のダム湖ですが、ダムサイトから最上流までは100km近い距離があります。トーナメントの日程は3日間、220名の参加者で競われますが、最終日の決勝戦に進出できるのは上位10名のみ。


 B.A.S.S.のトーナメントは釣ったバスの総重量で競われます。ただし、検量に持ち込めるバスは1日5尾まで。つまり、小さいバスをたくさん釣ってもあまり意味はなく、できるだけ大きなバスを5尾釣ることが重要です。また、検量に持ち込めるバスのサイズにも決まりがあり、これは釣り場によって異なりますが今回はラージマウスバスとスポッテッドバスが12インチ(約30cm)以上、スモースマウスバスが15インチ(約38cm)以上。バスは種類によって性質が異なるため、どのバスを狙うかも戦略のひとつになるわけです。


 トーナメント初日、暫定1位のウエイトを持ち込んだのは19歳の若手アングラー、ジャクソン・スイッシャー。その重量は16ポンド15オンス(約7,700g)。青木さんは15ポンド13オンス(約7,170g)を持ち込んで暫定4位につけました。


 そしてトーナメント2日目。この日で10位以内に残れなければ大会が終了してしまうという状況の中、青木さんは13ポンド5オンス(約6,040g)を持ち込み、トータルウエイトを29ポンド2オンスとして4位のまま決勝戦に進出。この時点で暫定首位に立ったデビッド・ウィリアムズのトータルウエイトは30ポンド6オンスで、青木さんとの差は1ポンド4オンス(約570g)となっていました。


 いよいよ運命の決勝戦。トーナメントリーダーのデビッド・ウィリアムズをはじめ多くのアングラーがウエイトを伸ばせない状況の中、青木さんは前日を上回る14ポンド11オンス(約6,660g)を持ち込みました。この結果、2位のアングラーをわずか1オンス(約28g)差でおさえ、見事な逆転でB.A.S.S.トーナメント初優勝を達成したのです。

念願のBassmaster Classic出場権を獲得。ひとつの夢を叶えた青木さんが次に目指すゴールとは

 優勝賞金は5万1,833 ドル(約560万円)。さらに青木さんはお金にはかえられないものを手にしました。それは、年に一度開催されるB.A.S.S.最大のビッグイベント、Bassmaster Classicの出場権。「出場するだけでも名誉」といわれるこのトーナメントは優勝賞金30万ドル(約3,000万円)を誇り、例年数万人の観客を集めるアリーナにステージが設けられます。

Aoki05.jpg

世界中のバスアングラーが憧れる夢舞台、Bassmasters Classic。ステージはアリーナに設置され、数万人の観客が詰めかける

 2013年に視察に訪れたという青木さんにとって、この大会への出場はアメリカ挑戦における大きな目標のひとつ。事実、今回の優勝が決まったステージ上での青木さんの第一声は「Bassmaster Classic!」でした。そして、人目をはばからず号泣...日本のトーナメントではほとんど見せたことのない青木さんの涙は、そこに到達するまでの苦労を物語っていました。


 涙のアメリカ初優勝を達成した青木さん。しかし、本当のアメリカ挑戦はこれから始まるといえるでしょう。トーナメントを主催するB.A.S.S.の公式サイトに優勝後のインタビューが掲載されていますが、日本の頂点を極めた青木さんはこの優勝を「これまでの釣り人生の中でもっとも嬉しい瞬間だった」としながらも「次の目標は(トップカテゴリーである)Elite Seriesに昇格してアメリカの最強といえるプロたちと競うこと」と語っています。


 Bassmaster Openは3つの地区で3戦ずつ、全9戦を開催。各試合では順位ごとに、優勝すると200ポイント、2位で199ポイント、3位で198ポイント...という形でポイントが付与されます。このポイントで9戦合計の上位3名がElite Seriesに昇格。さらに、この3名を除いて各地区における上位3名ずつと、昇格できるのはわずか12名という狭き門となっています。


 まだ2戦を消化した時点ではありますが、2022年に青木さんがElite Seriesの舞台に立ち、アメリカの強豪を相手に暴れまくっている姿が見られることを期待しましょう。

Aoki01.jpeg
渡米3シーズン目にして初めての優勝。しかし、青木さんの活躍はまだ始まったばかりだといえる。

RELATED

この記事に関連する記事