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日本語教育

AIと話して日本語会話を学べる!学習アプリ「HAi-J」開発の背景と今後の展望

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1987年の開校以来、20,000人以上の卒業生を輩出してきたヒューマンアカデミー日本語学校。これまで培ってきた教育メソッドをベースに、2024年に独自開発した学習アプリが「HAi-J」(ハイジェイ)です。

その最大の特徴は、日本語教育業界では初(※)となる生成AIを搭載することによって、いつでもどこでも自然な日本語会話を学び、練習できること。外国人学習者が生活や職場で必要な日本語スキルを効果的に習得できるよう設計されています。(※当社調べ)

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2024年9月には、企業や行政機関向け無料デモ版のトライアルをスタートしたHai-J

開発の背景にはどのような想いがあり、何を目指して進むのか。プロジェクト責任者の田中事業部長、リーダーを務めた太田、開発を担当したエンジニアの橋元に話を聞きました。

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                    (左から:橋元、田中、太田)

蓄積したノウハウ×最新技術。他に類を見ない日本語学習アプリ「HAi-J

―まずはHAi-Jの開発に至った背景を教えてください。

田中EO2.jpg田中 これまで日本語教育に携わってきた中で、日本語は「読む・書く・聞く」よりも「話す」ことの難易度が非常に高い言語だと感じています。人それぞれ習熟スピードが異なる中で、学校での日本語会話力の習得には、どうしても限界がある。そこで、いつでもどこでも日本語の会話を習得できるサービスを作りたいと考えたのが、HAi-J開発のきっかけです。

 また社会的な背景としても、日本語教育の所管が法務省の告示校から文部科学省からに移管し、「日本語教育の参照枠」という新たな基準も設けられました。その中で、言語活動別の習熟度を示す分類に「話す(やりとり)」「話す(発表)」が追加されたのです。そこに寄与する教材を作ることで、労働人口が減少していく日本社会を支える外国人人材が、摩擦やカルチャーギャップを感じることなく活躍するための学びの環境を作れるのではないかと考えました。

HAi-Jは他のサービスと比べてどんな特徴やオリジナリティがあるのでしょうか?

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太田 HAi-Jのベースになっているのは、元々ヒューマンアカデミー日本語学校が使用してきた「つなぐ日本語」という教材です。その最大の特徴は、一般的な「文法積み上げ式」ではなく「場面シラバス式」という方式を採用していること。

 実は、私は前職の出版社で「つなぐ日本語」の営業担当でした。その際にヒューマンアカデミー日本語学校の授業を見て、これはすごいなと感銘を受けました。そのご縁から、HAi-Jの開発プロジェクトに参画することになりました。

田中 外国語を学んだ経験がある方なら想像できると思いますが、会話というのは、ワンセンテンスだけなら簡単でも、その後のラリーが難しいです。文法積み上げ式でいくら正しい文法を学んでも、実際に自然な会話ができるようになるまでには相当な時間がかかります。場面シラバス式では、まずイラストなどで場面を提示し、そこでどんな会話をするのか考えてもらい、とにかく話してみることから始めます。文法はその後。すると皆さん、どんどん会話を吸収して話せるようになっていきます。

太田 HAi-Jにおいてもまずはフレーズの練習から始め、正しく話せるようになったらAIとの会話フェーズに進める仕組みになっています。場面シラバス式をベースに、AIと会話することで日本語会話を習得していく学習サービスは今のところ他にはないと思います。

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橋元 私はもともと事業会社でエンジニアをしていたのですが、AIとの自由会話で言語を習得していく点は画期的なサービスだと感じています。いきなり会話に臨むのではなく、フレーズの練習フェーズが設けられていることで、初学者でも少しずつ会話力を身につけることができる点も強みです。

 ヒューマンアカデミー日本語学校として培ってきたノウハウを詰め込んだアプリになっていると思います。

さまざまな苦難を乗り越え、ようやくスタートラインに立った。

―これまでの開発の中で苦労したどこですか?

田中 まず、どんなターゲットに対してどんなサービスに仕上げるのかという要件設計が大変でしたね。さまざまな議論を経て、「学校の中や先生がいなくても、自分で日本語会話を学べるアプリ」というコンセプトに落ち着きました。

太田 開発が始まる際にまず苦労したのは、やはりAIの会話精度ですね。最初のテスト版は、リリースできるレベルには到底至っていませんでした。まず反応速度が遅い。また、会話音声を出力するのはブラウザ側の制御になってくるので、フロントエンド側で会話をきちんと成立させていくのも大変でした。もちろんまだまだ改善の余地は無数にあると思っているので、今はやっとスタートラインに立ったという感覚です。

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橋元 HAi-Jはヒューマンアカデミーとして初の独自開発アプリなので、社内にナレッジがないことも大変でしたね。また私はもともと教育分野の人間ではないので、業界理解を深めながら進めていくことにも苦労しました。ただ、エンジニアとしては、今後のナレッジになるようにという目線も持ちながら開発していけるので、とてもいい経験になっています。

田中 余談ですが、橋元さんのチームメンバーと食事に行った際に「AIでこんなことやりましょう!」とか「こんなものを作ったらすごく楽しくないですか!」というような話題が尽きず、すごく楽しかったのを覚えています。夢のあるチームだなと思いましたし、これから教育業界がどんどんいい方向に変わっていくと確信しました。

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―とてもいいエピソードですね。ほかに、何か印象に残っていることはありますか?

太田 まだスタートラインに立ったところで、毎日必死なので振り返るような段階にないというのが正直なところです。私は教育者でもエンジニアでもないので、とにかくユーザーにとって使いやすいアプリになっているか、お客様が求めるサービスになっているかという目線を忘れることなく、改善を続けていこうと思っています。むしろ、これからがHAi-Jにとって本当の勝負どころですね。

異文化共生が進む日本社会に貢献するサービスを目指して。

―最後に、HAi-Jのこれからの展望や目標を教えてください。

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田中 「日本語を勉強する人は全員がHAi-Jを使う」というところまで持っていきたいと思っています。

 手前味噌ではありますが、HAi-Jはかなりの日本語会話力が習得できるアプリになっていますし、今後ますます多文化共生が加速していく日本社会に、必ず貢献できるサービスになると信じています。

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太田 まずは無料デモ版へのフィードバックをきちんと反映し、ぎこちない部分や使いにくい部分を改善していくことですね。その上で、学習ログを取ることで「この母国語の人はこのフェーズでつまずきがち」というような傾向を分析し、サービス品質の向上に活かしていきたいと思っています。

 日本語は世界的に見ても特殊な言語なので、どんな母国語のユーザーにもアジャストしていけるように進化していきたいですね。

 

田中さんの話とも重なりますが、少子化による労働力不足が進行し、異なる母国語や文化をもつ外国人との共生が求められる日本社会に対して、どのように貢献していくか。それは、これまで培ってきたノウハウがあるヒューマンアカデミー日本語学校だからこそ担える使命だと思っています。

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橋元 開発者としては、ユーザーに満足してもらうことが一番です。HAi-Jを使って日本語を話せる人がどんどん増えていくというのが、最大の目標ですね。

―本日はありがとうございました。

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